公団ウォーカー

電電アパート(NTT社宅)の研究

電電アパートとは

 電電アパートとはNTTの前身「日本電信電話公社」が建設した職員住宅のことで、今で言うところの「NTT社宅」です。数10世帯の小規模なものから300世帯以上の大規模なものまで、全国津々浦々に存在しました。スターハウスが多数建設されるなど公団住宅との共通点も多く、官舎や国鉄アパートとは違った魅力を持っていました。2000年ごろから社宅の廃止が急に進められ、現在は比較的築浅な物件を除いてほとんど取り壊されてしまいました。
辻堂社宅

全国に建設された社宅

 電電公社は、現在とは比べ物にならないほど多くの職員を抱える組織でした。自動交換機(クロスバ自動交換機)が全国に普及する1967〜1978年以前は、電話局に「交換手」と呼ばれる人がたくさんいました。電話機に付いているハンドルをぐるぐる回すと「交換です」と交換手の応答があるので「淀橋2番の文明堂さんへ」のように伝えると、交換手が手動で回線を繋げてくれるといった具合です。映画「となりのトトロ」の電話シーンを思い出すと分かりやすいと思います。また、昭和の終わり頃まで電報が広く利用されていましたので、電報配達員もたくさん必要でした。全国各地で通信を支える電話局職員の住まいを確保するため、たくさんの社宅が建設されました。社宅の家賃は低廉で、平成初期で花小金井の2DKが約5,000円、東村山の3LDKが15,000円程度でした。
花小金井東社宅入口 花小金井東社宅住棟配置図

電電アパートの特徴

 戦後間も無い昭和20年代、公営住宅だけでなく、公務員住宅や国鉄アパートでも住宅を効率よく建設するため独自の標準設計が生み出されました。電電アパートも昭和20年代後半には標準設計が出来ていたとみられ、国立国会図書館には当時の青焼き図面も残されています。昭和30〜40年代にかけて、標準設計に基づく社宅が大量に建設されました。この頃の社宅は、公団住宅よりやや広いものの専有面積は60平米以下が中心で、決して広いとは言えませんでした。昭和50年代になると、専有面積70平米以上の住戸が主になり、プレハブ工法の高層棟など特徴のある建物が建設されていきました。
NTT標準設計青焼き図面1 NTT標準設計青焼き図面2

電電アパートの標準設計

 国会図書館で見つけた『アパートの標準設計』(規格住宅研究会編・1959年)という本に電電アパートの間取りが掲載されていました。設計符号の付け方は「2D」や「3HDL」といった見慣れない表記で、公団住宅のそれとは異なるようです。頭の数字は寝室数、Dは独立した食事室、DKはダイニングキッチンを有する住戸、末尾のLは低層棟(Low-rise)を表しているようです。大型住戸についている「H」はよくわかりませんでしたが、High-classのHでしょうか。
※以下に掲載する間取り図は、上記『アパートの標準設計』の一部を引用したものです。

アイコン標準設計1DK型

 専有面積37.5平米の4階建てです。ダイニングキッチン(一部畳)と1寝室で構成されています。夫婦と幼児1人の世帯を想定して設計された間取りです。花小金井や青梅橋社宅などの一部の棟で二戸一改造されていました。
NTT標準設計1DK NTT標準設計1DK



アイコン標準設計2DK型

 専有面積43.6平米の4階建てです。ダイニングキッチンが北側にあり、2寝室が南側にあります。外に張り出すような形状の階段室が特徴です。電電アパートの中では最もポピュラーな形式です。
NTT標準設計2DK型1 NTT標準設計2DK型2



アイコン標準設計2D型

 専有面積52.4平米の4階建てです。公団ウォーカー管理人の私が生まれ育った花小金井東団地14号棟はこの間取りでした。独立したキッチンと居間と2寝室で構成されています。玄関と台所の間に食料庫がある独特の間取りです。浴室と脱衣所の間に人研ぎ床の空間があり、そこに洗濯機が置けるようになっていました。
NTT標準設計2D型1 NTT標準設計2D型2



アイコン標準設計2DKL型

 専有面積48.3平米の2階建てです。2DK型と部屋の配置がよく似ていますが、水回りがゆったりしておりやや広め。2階建てですがメゾネットではありません。階段室からバルコニーに抜ける倉庫があります。
NTT標準設計2DKL型1 NTT標準設計2DKL型2



アイコン標準設計2DL型

 専有面積55.0平米の2階建てです。2DKL型と比べると、居間が広くなり台所が独立しています。
NTT標準設計2DL型1 NTT標準設計2DL型2



アイコン標準設計3DK型

 専有面積55.6平米の4階建てです。3寝室に棚で仕切られた食事室と台所があります。階段の真ん中が吹き抜けになっているのが特徴です。
NTT標準設計3DK型1 NTT標準設計3DK型2



アイコン標準設計3DKL型

 専有面積58.3平米の2階建てです。3寝室と大型のダイニングキッチンがあり、物置もあります。4.5畳の和室は廊下から出入りするようになっており、独立性が高くなっています。
NTT標準設計3DKL型1 NTT標準設計3DKL型2



アイコン標準設計3HD型

 要職の方が住む住戸でしょうか。専有面積77.3平米を有するかなり大型の住戸です。他の中層フラットと異なり3階建てとなっています。台所は完全に独立しており、居間も相当な広さです。広いといえど各部屋の独立性は低く、寝室へは居間から直接出入りするようになっています。
NTT標準設計3HD型1 NTT標準設計3HD型2



アイコン標準設計3HDL型

 3HD型の低層タイプです。専有面積は65.7平米で2階建です。4.5畳の和室は廊下から入れるようになっています。
NTT標準設計3HDL型1 NTT標準設計3HDL型2

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(都内の電電アパート)



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