公団ウォーカー

日本住宅公団赤羽台団地あかばねだいだんち

東京都北区赤羽台 公団賃貸住宅 昭和37年入居開始

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アイコン赤羽台団地の概要

 団地ファンの間では「聖地」と称される団地です。ここは東京23区内初のマンモス公団住宅で、総戸数は3373戸を誇ります。この場所はもともと陸軍被服本廠だった場所で、赤羽駅から歩いてすぐの場所にある高台の広大な土地です。日本住宅公団がようやく手にした夢の一等地ですから相当な特別扱いだったらしく「未来の団地のモデル」を作るべく、実験的な要素を含んだ様々なタイプの住棟が建てられました。完成した団地は、さながら公団の見本市のようでした。海外から視察団が来る時は、必ず当団地を案内していたそうですよ。





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地図の上が南で、駅の方角です。この団地ができる前からあった陸軍用地内の道路形態をそのまま生かし、囲み配置や直交配置など街区ごとに特徴が際立つ配置としました。駅に近い崖沿いに8棟ものスターハウスを配置しすることで視界の抜けを確保しつつ、特徴ある景観を作り出しています。商店街は、囲み配置となっている棟の1階にあり、いわゆる下駄履き住宅になっています。駐車場も300台分と、当時としてはかなり多く整備されました。


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赤羽台団地は建替工事に向けて全棟取り壊し予定でしたが、2019年(令和元年)6月に、UR都市機構が日本建築学会の要望を受け「スターハウス3棟と中層フラット1棟を保存のうえ、団地の情報発信施設(博物館)を敷地内に建設する」方針が公表されました。翌月には、国の登録有形文化財に登録するよう答申がなされ、新聞に載るほどの大きな話題となりました。


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団地のメインゲートとなっていた坂です。現在は、赤羽台トンネル横の階段がメインゲートとなっていますが、団地ができた当時はその道路は完成しておらず、この狭い坂が駅につながる唯一の入り口でした。団地住民を当て込んで、ちょっとした商店街になっています。


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こちらが赤羽台トンネル横の新しい入り口。ところでこのトンネルは、団地の敷地内を縦断していますが、当初は掘割構造で整備する予定だったそうです。しかしながら、団地内の分断と環境悪化を危惧した住民たちの運動により、トンネル構造で整備されました。ここから見えるスターハウスは、とても神々しかったです。


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中層フラットがずらっと並んでいます。全部同じように見えますが、妻面にベランダがある窓がある棟など、1棟1棟よく見ると違う部分があります。


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スターハウスです。かっこいいですね。建物は常盤平団地や前原団地と同タイプ。左右ウイングが45平米、南ウイングが47平米です。スターハウスの周りには緑地帯が連続しています。


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1階がテラスになっている住戸です。赤羽台団地の特別感が伝わってきます。


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7階建て高層棟の上には展望台らしきスペースが。


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商店がある下駄履き住宅、50号棟です。隣の都営桐ヶ丘アパートからの買い物客も多く、かなり賑わっていたそうです。引き売りや行商もよく来ていたとか。

【昭和40年ごろの店舗は下記の通り】
明治屋(スーパーマーケット)、緑屋衣料品店、関口精肉店、細野青果店、魚吉、小泉煮豆漬物店、竹寿司、パン不二泉、丸美屋洋品店、片倉金物店、山西理容室、三協ドラッグ、高橋美容室、柳屋酒店、共同水産、いせ長青果店、精肉太田屋、山形食品(パン・ケーキ)、そば江戸屋、美津屋(米屋)、須田生花店、中村屋(菓子)、長寿庵(そば)、栄寿司、松屋酒店、喫茶東洋茶坊、美容ラポーテ、電気屋ジューギン、足立屋米店、キャノン靴店、本屋文書堂、時計美宝堂、中村屋(パン・ケーキ)


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住棟デザインも向きも一様では無く、個性に満ち溢れています。ちなみに赤羽台団地の容積率は71%(建設当時)です。今の感覚で言えばなんと贅沢な土地利用と感じるでしょうが、これでも建設当時は高密度な団地だと言われていました。ちなみに建て替え後のヌーヴェル赤羽台では容積率200%以上の高度利用が図られています。


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こちらが囲み配置のエリアです。新しい都市住宅のモデルケースとして作られた一角。公団のエース、建築家の津端修一さんによれば、もっと囲み配置をたくさんやりたかったそうですが、願い叶わずだったとか。なお、この囲み配置の考え方は、建て替え後の「ヌーヴェル赤羽台」の配置に継承されています。


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囲み配置の中央の中庭です。かなり広くて、まるでホテルの庭園のようです。


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工業が盛んな赤羽の土地を開発するにあたって、住環境の整備には特に気が使われました。囲み配置の中の楽園のような空間も、そういったことから生まれたのかもしれませんね。


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囲み配置の北側は、単身専用棟です。後ほど詳しく紹介します。


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赤羽駅方面から見た団地です。崖沿いにスターハウスが並んでいて、賑やかな感じがします。


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紅葉とスターハウスの調和が美しいですね。


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こちらは給水塔。7階建て住棟に対応するため、かなりの大きさです。給水塔は、団地の中で最も背が高い建物になるので、かなりデザインに力が入れられています。


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「くらげ公園」です。赤羽台団地内には、コンクリート製の個性的な遊具がたくさん配置されていました。この「くらげ公園」を囲む一角が登録有形文化財になった住棟ですが、遊具たちは撤去されてしましました。


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こちらは「おばけ公園」です。このおばけ遊具、てっきり赤羽台団地オリジナルのアート作品なのかと思っていましたがそうではないとのこと。埼玉県内の公園にも同じものがあったそうです。


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素敵な景色ですね。ここが陸軍の施設だったとは思えないです。


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この木の大きさ、見事です。スターハウスをすっぽりと覆ってしまっています。トトロが住んでいそう。


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下駄履き住棟(商店街)です。雨に濡れず買い物ができます。


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「バーベキュー大会」のお知らせです!団地自治会を中心として、楽しいイベントがたくさん企画されていたのでしょう。「申し込みは牛乳センターへ」とあります。昔の団地では、生活必需品の牛乳を共同購入して「自治会牛乳」として安く販売するなどして生活防衛をしていました。そのような活動が大きくなり、現在の生協につながっていきます。パルシステムのルーツを辿ると、辰巳団地自治会生協にたどり着くんですよ。ご存知でしたか?


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これは「あの壁画を(住棟に)つけることができたら、もっと入居者によろこばれただろうに」と悔やまれつつも陽の目を見なかった伝説の壁画「両国花火」です。実は、赤羽台団地建設の時に「壁画事件」という公団職員内で語り継がれる大事件がありました。公団東京支所の担当者が「赤羽台団地のシンボル」として住棟に貼り付けるため、かなり名のある人にデザインしてもらいこの巨大タイル壁画を製作したところ、明日工事という段階になって公団本社から「無駄遣いだ。やめろ。」と急遽設置を却下されたという事件です。作品は「両国花火」と「夢」という2点あり、幅15m、高さ20mのかなり巨大なものだったとのこと。お値段は、ラーメン一杯50円の時代に、なんと1300万円。壁画を推進していた担当者はかなり血の気の多い男で「言葉づかいがおかしい。団地の美観を高め、入居者の心のシンボルにもなるものが、どうしてムダなんだ。とにかく直属の上司ではない人間の指示なんかには従えない」とつっぱねましたが、本社がどうしてもウンと言わない。「どういう理由で不適当なのか」と質問状を出すと、副総裁名で「デザインが不適当である。」と文書を突き付けられた上、役員会の席上で支社長が総裁から「これだけこじれたんだから中止したら」と言われ、ついに壁画は陽の目を見なかったのです。※公団記念誌「百万戸への道」より。
その後作品は泣く泣く5つか6つに割り、赤羽台団地のピロティや他団地に転用されたのだとか。ちなみに公団ウォーカーでは、東久留米団地の商店街のピロティに設置されていることを確認しています。


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この壁画が住棟の外壁に貼られていたらどんな姿だったでしょうかね。住棟にタイルアートを貼る試みは赤羽台団地では却下されましたが、この数年後に登場するみさと団地や村上団地などで分譲棟を中心に実現しています。(これほど凝ったものではないですが)

アイコン赤羽台団地2005年の風景



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直交配置ですね。


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小世帯型住戸が1階段1フロアに4戸あるタイプ


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7階建ての片廊下型で、腰壁が高く設置されているタイプ


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給水塔を間近から見てみましょう。


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給水塔の足元はこんな感じ。入ってみたいですね。


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右側の住棟が赤羽台団地、左側が隣接して建っていた官舎です。


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官舎と単身専用棟が向かい合っています。


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商店街と向かい合う住棟は型廊下型です。本当に住棟のバリエーションが多いですね。


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この50号棟の1階が商店街になっています。


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「皆様のよろこびにご奉仕する赤羽台団地名店街」往年は、スーパーマーケットの「コモディイイダ」が入居していました。


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つみきのような遊具


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商店街


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赤羽台トンネルの上にあった石像


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春になりました。新緑が美しいです。


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スターハウス周りは散歩が楽しいです。


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桜が咲いていました。


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点滅式信号が団地の真ん中にありました。


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ベランダの手すりが太いタイプ


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東側の区画。ピロティがありました。


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ダストシュート



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