公団ウォーカー

団地の暮らし

 2009年12月、昭和40年築の緑あふれるUR神代団地で待望の団地生活を始めた私。最初は未知の団地暮らしに対して不安もありましたが、今では快適で楽しい団地ライフを満喫しています。このコーナーでは、団地ファンとしてだけではなく、居住者視点で見る「団地」と、そこでの暮らしぶりをご紹介します。


団地とコミュニティ

 鋼鉄の扉一枚で外と中を区切ることができ、バラバラな地域から集まった何のしがらみもない「団地」のコミュニティは、日本古来の農村的しがらみから解放された全く新しいものだったといいます。この新しい街が、私たちや子どもたちにとって「ふるさと」になるように、住民を中心に様々なイベントが企画されました。様々な行事に参加しているうちに、団地への愛着がどんどん増してきます。

盆踊り大会

盆踊り1 盆踊り2 盆踊り3 盆踊り4
 夏休みの子どもたちが心待ちにしているイベントが盆踊り大会です。太鼓にやぐらに多数の出店。想像以上の人出に驚きました。さすが歴史ある団地は違います。毎度恒例の「お子様の時間」では、やぐらの上でちびっこたちがアラレちゃん音頭を踊り、お菓子の詰め合わせをもらうのが恒例行事。団地以外ではなかなか味わえない貴重な思い出作りができます。最寄りのつつじヶ丘駅から浴衣を着て、団地の祭りに向かう人たちがいました。夏祭りが同窓会がわりになっているという話が聞いたことがありますが、もしかしたら彼らも団地に住んでいた人たちなのかもしれません。

団地祭

団地祭1 団地祭2
 盆踊り大会とは別に「団地祭」と呼ばれるイベントがあります。毎年秋に開催され、フリーマーケットや模擬店の出店のほか、太鼓・空手など様々なサークルの発表が行われます。以前は商店街が主催していた行事だったようですが、現在は自治会が主催しています。この団地祭で公団ウォーカーは「ちいさな団地写真展」を開催させていただいております。

餅つき大会

餅つき大会1 餅つき大会2
 毎年正月前後には「餅つき大会」が開かれます。本格的な杵と臼で餅を大量につき、あんこ餅やきな粉餅をパックに詰めて格安で販売されます。集会所が開放され、つきたてのお餅を食べることができます。団地住民が毎年楽しみにしているイベントです。

居酒屋じんだい

居酒屋じんだい1 居酒屋じんだい2
 「居酒屋じんだい」は月1回、夜6時から8時まで集会所で開かれています。会場にはおつまみとお酒が並べられ、適当なテーブルに座って自由気ままにおしゃべりしています。名前の通り「居酒屋」なので、知り合いや友達と一緒にしゃべるにはとても良い場所です。時々、ママ友集団と思しき子連れ集団も見かけます。入場はワンコイン(500円)です。その辺の居酒屋さんに行くつもりで友達または家族同士で入場すると良いです。

団地のコミュニティ活動を支える自治会

自治会1 自治会2
 これらの活動を支えているのは「神代団地自治会」です。令和2年時点でも、神代団地自治会の会費納入世帯は、なんと約8割!ほとんどの人が自治会に会費(月200円)を納めています。自治会ではこの会費を原資に、各種イベントのほか、ふれあい広場や赤ちゃん向けハイハイ広場の運営、換気扇フィルターや浄水器の共同購入、URとの家賃・環境改善に関する交渉、来客用駐車場の管理など住民の暮らしをよくするための活動を事細かに行なっています。

号棟会議

 ある日、階段に「号棟会議 ○月○日、目の前の公園集合」という張り紙がされました。行ってみると、同じ棟に住む住民が集まっていました。自治会の役員を中心に、井戸端会議のような雰囲気で地域の不審者情報や、今後の団地改修工事に向けた要望の取りまとめなどを行っていました。ほかの階段の住民と顔を合わせるチャンスはなかなかないだけに、貴重な機会だと感じました。

URとの交渉・協議

 団地の環境改善など、自治会とURで定例的に協議を行なっています。平成30年に長年の要望が実を結び、住戸の「修繕負担区分」の見直しが行われました。それまでUR団地では、入居時にはピカピカに修繕するものの、入居後の部屋の修理は基本自腹でした。見直しにより、畳や襖の縁、ガラスやビニールクロスなどはURが修理することとなり、借主は障子や襖の張替えなど最低限の負担のみでよくなりました。これにより、退去時の現状復帰の自己負担額も相当減ったと思われます。

回覧板

 年に何度か回覧板が回ってきます。秋に年1回、回ってくるのが「全国統一行動!公共住宅を守るため、署名・カンパにご協力を!」という回覧板です。署名用紙と共にカンパを入れる封筒がくっついていて、中には500円玉がたくさん入っていました。実は、日本ではバブル前からずっと公団(UR都市機構)を民営化しようとする勢力がいて、たびたび政争の具とされてきた歴史がありました。敷地をゆったり使った団地は、不動産屋的にかなり「おいしい土地」であり、ひとたび売却されれば高層マンションに建て替えられ、住民は追い出されてしまうかもしれません。バブル以降も、公団が民間の手に渡り、団地敷地が開発業者に売却されてしまうかもしれない危機的状況が何度も訪れ、それに抵抗してきたのが全国の団地自治会(全国自治協)なのです。

階段室がコミュニティの基礎的単位

階段室コミュニティ 階段室コミュニティ
 神代団地のように縦の階段を上下10世帯で共有する構造の団地を「階段室型」と呼びます。階段室型は、同じ階段に住む住民が日々昇り降りし、すれ違う機会も多いため自然と顔見知りになることが多いです。この上下に重なって住んでいる同じ階段室の住民とは、基本的に仲良くするように心がけた方が良いと思います。上下階の足音やゴミ出し時のちょっとしたことも、同じ階段室で仲良くしている人同士であれば「お互い様」で問題にならないものです。引っ越してくる際は、同じ階段室の人にタオルなど粗品を持って挨拶に回る方が多いようです。ちなみに神代団地では、階段ごとに自治会費の集金担当がいます。会費と言ってもせいぜい月200円です。自治会費の納入は任意ということになっていますが、建前はそうであっても集金に行って断られれば、快くは思われません。払っておいた方が得策ではないでしょうか。


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(団地の部屋)



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